非常時のお口のケア

台風19号は各地に大きな被害をもたらし、多くの方々が不自由な生活を余儀なくされています。

知人の住む地域も浸水し、日々片付けに追われているとの辛い報告がありました。

被災された皆様に心からお見舞い申し上げ、復興が着実に進む事を願ってやみません。

 

ところで、慣れない避難所での生活や断水等で水不足の場合、きちんと歯磨きをするのが困難になる事も多いかと思います。

しかし、お口の衛生状態の悪化は体全体の健康に影響します。

特にご高齢の方は、口の中の汚れが原因で細菌が肺に入る事による「誤嚥性肺炎」がおこりやすくなるので注意が必要です。

阪神大震災東日本大震災後に、被災地で肺炎で亡くなる高齢者が急増したというデータもあります。

また、風邪やインフルエンザ予防にも口腔ケアが重要です。

 

以下に避難先などでも行える口腔ケアについてご紹介します。

被災された方が当院のブログにお目をとめて下さる事は無いかもしれませんが、お困りの方に教えて頂いたり、「もしも」のためにお読み下さい。

 

歯ブラシがない時の口腔ケア

● 食後や就寝前に少量(30CC程度)のお茶や水を使って、口の隅々まで届くようにブクブクうがいをする。水は一気に口に含まず、2~3回に分けて行う方が効果的。

 

歯ブラシも、歯磨きに使える水もない時

● 食後にハンカチ・ティッシュ・ウエットティッシュ (出来ればアルコールを使っていないもの) を指に巻いて歯をぬぐう。汚れたら、巻き付けている部分を少しずつずらすように行う。最後に舌の表面の汚れも拭うようにする。

 

歯ブラシはあるが水が少ない時

● 少量(30CC程度)の水をコップに入れ、その水で歯ブラシをぬらし歯を磨く。歯ブラシが汚れたら、その都度ウエットティッシュティッシュなどでふき取りまた磨く。舌の表面も数回こする。最後にコップの水で2~3回に分けてブクブクうがい。

 

いずれの場合も、最後に水の代わりに市販の洗口剤でブクブクうがいを行うと効果的です。

 

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非常持ち出し袋には、歯ブラシと一緒に洗口剤を1本備えておけば安心です。

 

 また、高齢者の義歯をお口の中に入れたままにしておくと、義歯と粘膜の間に細菌が増え、炎症を起こしたり誤嚥性肺炎の原因となります。

食後や就寝前は必ず外し、洗うか水で濡らしたティッシュやウエットティッシュで汚れを拭うようにしましょう。

義歯を外した後は、ブクブクうがいをするか歯ぐきや舌の汚れを拭います。 

 

災害時は水分や栄養不足、ストレスなどから唾液の分泌が減少します。

唾液は食べ物の消化を助けたり、口腔内の洗浄や抗菌作用など様々な優れた働きをします。

唾液を増やすには、食べ物をよく噛んで食べたり、ガム(キシリトール入りのガムが理想)を噛んだり、唾液腺マッサージを行うのも有効です。

 

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親指の腹で、顎の骨の内側の舌の真下あたりを押し上げる。(10~20回)

 

相次ぐ災害に、日常生活がいかに貴重であるかを実感します。

今回被災された皆様が、一日でも早く台風にみまわれる以前の平穏な日々に戻る事が出来る事をお祈りいたします。

大変お疲れだと思います。

前に進むためにも、どうかお口のケアも含め、お身体をお大事になさって下さい。