もしも…への備え

当院の待合室にも置いているこのリーフレット

「手術がきまったら歯科へ行きましょう」

がんなどの重い病気の治療で手術を行う際、術中や術後に起こりうる様々なトラブルを防ぐため、事前に歯科の受診をお勧めしています。

歯科で口腔内を治療・清掃する事で、口内の細菌が原因となる術後の肺炎や合併症を予防し、抗がん剤の使用による口腔粘膜炎の症状を大きく軽減出来ます。
それにより、病気の治療がスムーズに行われ、早期のリハビリ開始や口からの食事の再開が可能になり回復が早まります。

2013年〜2016年に信州大学病院で、肺がんの手術を受けた患者さん457人のうち肺炎になった割合は、歯科が介入しなかった場合が6.8%であったのに対し、歯科による治療・清掃を行った場合は1.9%に抑えられたとのデータがあります。

当院は現在湘南鎌倉総合病院において、歯科医師と歯科衛生士が病棟に往診し、術前・術後に歯科治療と口腔ケアを行う「周術期口腔機能管理」を行っており、成果をあげています。

入院患者さんの日々の口腔ケアは、病棟の看護師さんにもご協力頂く事になります。
今年の5月、湘南鎌倉総合病院において、患者さんの看護にあたっている皆様に向け口腔ケアのレクチャーをさせて頂きました。

簡単な実習も行いましたが、より詳しい研修を望む声が多く寄せられており、この度看護師さん向けのマニュアルを作成しました。

これからこのマニュアルを元に、各病棟の看護師さん達に研修をさせて頂く予定です。


先週、心筋梗塞で緊急搬送された患者さんへの往診依頼がありました。
口から気管にチューブを通し肺に空気を送る処置を行うにあたり、グラついている前歯が抜けて気管に入ってしまう危険性がありました。
当院の歯科医師が急行し、歯を抜き、血が固まり難くなる薬を投与しても影響がないような処置を行い、無事手術を行う事が出来ました。

「手術が決まったら歯科に行きましょう」と書きましたが、残念ながらこのように突然手術が必要になる事も考えられます。
縁起でもない…と思われるかもしれませんが、「もしも」に備え日頃から定期的な歯科検診を受け、口腔内を健康な状態に保つ事が大切です。
その事が、たとえ病気になってしまっても、治療を円滑に進め、早期回復と早期退院を可能にします。

まだまだ「口の健康⇄全身の健康」の考えが一般に浸透しているとは言えません。
しかし、病院に入院中に歯科治療・口腔ケアを行った患者さんが、退院されてから当院を受診して下さる方が増えて来ました。
ご自身の闘病を通じ、お口の健康の重要性をご理解頂いたためと嬉しく思います。
今後も病院と協力し、周術期口腔機能管理の充実に努力して参ります。