今回は、歯の磨耗と噛み合わせについて書かせて頂きます。
歯は毎日噛み合わせて使うことで少しずつすり減っていきます。
その摩耗速度は平均して年間0.02~0.03㎜とされています。
前歯・奥歯など部位の差などですり減る速度は異なりますが、単純計算で10年で0.2~0.3㎜、100年生きれば平均2~3㎜すり減るという事になります。
そして、歯ぎしりやかみしめ癖のある方はこれがより顕著になります。
(この方は歯ぎしりで歯がかなりすり減ってしまっています。)
しかし、むし歯や歯の欠損のために金属やセラミックなどで修復した人工物材料はあまりすり減りません。
その結果、人工修復物を装着してから何年か経つとその歯は、修復物のない歯と比べて噛み合わせが高くなることになります。
歯は厚さが0.2~0.3㎜の厚さの歯根膜という靭帯(すじ)で結合しており、この歯根膜は噛んだ圧力を緩和する機能があります。(緩圧作用)
しかし、0.2~0.3㎜、の膜が緩圧できる量は、その厚さの10%あるかないかと考えられます。
修復物を装着して2~3年経つと、修復物で噛み合わさっている部位は、自身の歯同士で噛み合わさっている部位に対し、嚙み合わせが0.04~0.05㎜高くなっていることになります。
歯で髪の毛1本(太さは0.05~0.15㎜)噛んでも分かるものですが、徐々に生じる噛み合わせの高さの差は、何らかの不調が生じるまで気付かないものです。
嚙み合わせが高いところがあると、そこに歯の負担が集中したり、噛合せにズレが生じるようになり、顎関節の動きにも影響がでます。
実際歯の不調を訴えて来院される方で、嚙み合わせが原因の方が多くおられます。
噛むと痛い・しみるといった症状に対し、一般的なむし歯の治療のみ行っても不調は改善されません。
まずは嚙み合わせのバランス修正が必要になります。
かかりつけ歯科として患者さんの歯とお口の健康を守るには、まずはむし歯を作らせない、できるだけ歯に人工修復を入れないようにする事が最良です。
しかし、もしむし歯ができてしまったら、摩耗速度が歯に近い素材を用いて修復する、歯より硬い材料で修復したのであれば、定期的に噛み合わせの調整と関節の動きをチェックしていく等の対策が重要です。
車の定期整備でタイヤの摩耗のチェックをするように、歯のすり減りや噛み合わせのバランスに対しても定期検診が必要です。
当院では、歯周病の治療・検診でメインテナンスを行う際、歯のすり減りや噛み合わせのチェックも行っています。
歯科医院は治療で通院するだけでなく、歯とお口の健康状態のチェックとメインテナンス等のために定期的に通院することで、さまざまな症状やトラブルを未然に防ぐことができます。
生涯ご自身の歯で食し続けるため、歯科医院をうまく利用していただきたいと思います。